日本の工芸の魅力を北陸から発信する「GO FOR KOGEI 2021」が9月10日、北陸3県の寺社やギャラリーなど5会場で一斉に始まった。
開創1300年の那谷寺(小松市那谷町)では「現代アート化する工芸」をテーマに、工芸的な技法や素材をベースにしながらも、従来の「工芸」の枠には止まらない5人の作家の斬新な作品が展示されている。
田中信行さんの大型の立体作品は、つややかな漆塗りの曲面に土間の柱や天井が映り込み空間と一体化。キュレーターの秋元雄史さんによると、歴史ある同寺の建築空間の一部として作品が鑑賞できるよう作家だけではなく建築家も参加し、光や間取りなどのバランスを見ながら構成を検討したという。国指定重要文化財の書院では他にも、神代良明さんの深みのある青が印象的なガラス作品や、沖潤子さんの繊細な刺しゅうによるインスタレーション作品、澤田真一さんのシンボリックな陶芸オブジェなど、それぞれの作品が呼応するよう配置する。
今回の展示により名勝「琉美園」も散策できるようになっており、庭園奥の茶室では佐々木類さんの作品を展示。外光を閉ざした真っ暗な茶室内に、降り積もった雪の中で吹いたという蓄光ガラスの作品がぼんやりと浮かび上がる。同寺を会場にすることでインスピレーションを得たという佐々木さんは「天気や人の動きでも輝き方が変わるため、鑑賞は一期一会。庭を流れる川のせせらぎや、小石を踏みしめる音など、この場所全てを一体化して作品を見てもらえたら」と話す。
開場時間は9時15分~16時。入場料は、那谷寺のみ=800円、共通パスポート=3,000円。10月24日まで。