小松のコミュニティースペース「とんとんひろば」(小松市小馬出町)で7月3日、高齢者の話を聞き一冊の本に仕上げる「聞き書き」の講習会が開かれた。
2008(平成20)年から聞き書きの活動を行うNPO法人「いのちにやさしいまちづくり ぽぽぽねっと」が主催。話し手の心のケアや認知症の予防効果の期待から、小松市民病院の緩和ケア病棟やデイケア施設のスタッフによる聞き書き活動が行われているほか、金沢大学や公立小松大学の学生など若手メンバーも増えている。
この日、県内外から13人が参加した講習会には、聞き書き作家の小田豊二さんが、具体的な実践方法とともに、聞き手の心構えとして「目で聞く」ことの大切さを伝授。その後、13年間聞き書きを続け、聞き書き講師としても活動する金沢大学医学部保健学科の天野良平名誉教授が、2人1組で7分ずつ聞き書きをするレッスンを行い、相手が話しやすいテーマ選びのコツなどを教えた。
同NPOでは、コロナ禍で対面での聞き書きが難しい中でもオンラインで話を聞くなどの活動を続けており、「人と接することが少なくなった状況だからこそ、『話をしたい、話を聞いてほしい』という高齢者の気持ちを改めて知る機会になった」という。
天野教授は「人は誰でも『とっておきの話』を持っている。一人一人の人生を一冊の本にして残していくことは、地域の暮らしを残していくこと。聞き書きから人や歴史、文化がつながり、互いを認め、支え合うような社会になれば」と期待を寄せる。
同NPOでは今年の秋を目標に、隔月で開いていた聞き書きカフェを再開し、地域の人たちの聞き書き本を作る活動を続けていく予定。