加賀市の柴山潟で8月16日、片山津温泉の夏の風物詩「灯籠流し」が行われた。
片山津温泉の守護寺であり「お薬師さん」として親しまれる愛染寺(加賀市片山津温泉)が、1952(昭和27)年から行うお盆の伝統行事で、帰ってきた故人の魂を再びあの世に送り出すために始まった。
故人の名前を入れた灯籠には、5種類の仏画に思い思いの色が塗られており、中のろうそくの光で淡い色彩に浮かび上がる。住職の竹内秀岳さんは「水に溶ける素材で作られているため、広い潟でも流すことができる」と言い、最近では願い事を書き入れる人も増えており、「コロナが早く収束しますように」と添えられた灯籠もあったという。ライトアップされた噴水や浮御堂、夏の期間中は毎日打ち上げられる花火などで、湖面一帯が幻想的な雰囲気に包まれた。
灯籠は1基800円で、宗派などに関係なく受け付けている。お盆の忙しい時期に帰省できないことから灯籠を流すことで先祖供養したいと、旅館に勤める中居を中心に行われていた時代もあったが、旅館の廃業などにより申し込みが減少。毎年開催が危ぶまれる中、今年は金沢や福井からの応援があり、900基を超える灯籠が集まった。同寺では運営に携わってくれるパートナーも募集しており、存続に向けた可能性を探りたいという。
竹内さんは「灯籠がゆらゆらときらめく様子は天の川のようで、静かな潟だからこそ作り出せる幻想的な風景。お盆の心を伝える伝統行事として、これからも続けていきたい」と話す。